2013/10/04

【JGRB】 第1回「バークレー漂流教室」のお知らせ

新入生歓迎会の成功で勢いづいたJGRB、今度は、「バークレー漂流教室」と題する勉強会を開きます。モデレーターは、不肖、私が務める予定です。

「開発学は素人なんだけど・・・」というあなた。心配いりません。私も素人です。
バークレーに流れる自由な「知」の空気を、一緒にたのしみましょう!

案内メールが既に届いている方は登録不要ですが(そちらのメールにご返信ください)、そうでない方も、気兼ねなく私までご連絡ください。

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バークレー漂流教室:  第1回 全方位の開発学

経済学から伝統智まで、およそ考えつくあらゆる専門領域と関わりを持つことから、「全方位の学問」と言われる開発学(出所:Satoru)。

多彩なバックグラウンドを持つ皆さんが集まって、切り込んでみたら、またひとつ、新しい風景が見えてくるかもしれません。

初心者、大歓迎。
独自の視点、熱烈歓迎。
ゆるく、たのしく、でも志は高く、開発学への登攀を目指します。

日時: 10月19日(土)12時~14時頃
場所: Goldman School Public Policy, Room 105 (地図はこちら)
参加費: $5 (ピザと飲み物をご用意する予定です)
スピーカー: 開発学に造詣の深い日本人3名 (予定)

ご参加希望の方は、

 1.氏名/所属
 2.(もしあれば) 開発学に関する研究/仕事の内容 
 3.(もしあれば) 開発学に関して興味深く思っていること、最近読んだおもしろい本など

の項目を添えて、当方までお申し込みください。




(2013年10月21日追記)
開発学関係者はもとより、「門外漢サイド」からも、法曹界から医学界まで、幅広く才智ある人たちに集まっていただきました。おかげで、刺激的な(刺激的すぎてちょっとここには書けないような)お話をたくさん伺うことができました。

ご参加いただいた方々に、改めて御礼を申し上げます。
このイベントの成功は、留保なく、皆さまのおかげです。


準備中にGSPPのヘンリー学長が来て、「Berkeley Drifting Classroom?なんだ、そりゃ」と首を傾げてたのがおもしろかった。ま、そりゃわからないわな。

当初の予定は2時間だったけど、結局3時間半も費やしてしまった。これは司会である私の責任です。すみません。

はじめに、スピーカー以外の参加者から簡単に自己紹介をしてもらった。「参加者の多様性をどこまで確保できるか?」という当初の懸念は、この段階で心地よく吹き飛んだ。

次に、開発学に造詣の深い3名(大学教授、開発機関職員、NPO職員)から、「わたしの歩んだ道」に関するお話。皆さん「漂流教室」の趣旨をご理解くださり、たのしい裏話をいろいろ語っていただいた。(全20枚にわたる各スピーカーのスライドは省略)

第2部では、各スピーカーから事前に募った「常々思っていること/他のお二方&参加者に聞いてみたいこと」を肴として、ゆるめのディスカッションを行った。

大学で長年研究をしていて、「これって一体何の役に立っているの?」とふと自問したMさんからの質問。その回答として、「影響評価などの学問的な裏付けはプロジェクトの予算獲得の根拠となる。また、関連論文が米国政府のGAO(Government Accountability Office)やCBO(Congressional Budget Office)に引用されると、それは担当者にとって大きな『後ろ盾』となる」など。

開発機関で長年勤務してきたUさんからの質問。アカデミック寄りの参加者からは、「使ってるよ」の声と、「正直、あんまり・・・」の声が、およそ半々。活用を難しくしている要因として、「検索作業の煩雑さ」と「データの信頼度の低さ」の2点が主に挙げられた。
「データの信頼度の低さ」については、世銀の能力云々というよりも、最貧国で統計データを得る行為自体の難しさについて言及された。国によっては「データでっちあげビジネス」のような闇商売も横行しており、データの真偽を見分けるのはきわめて難しいとの指摘もあり。

これは私からの質問。最近読んだPaul Collierの「The Bottom Billion」では、いつまでも経済成長できない最貧国の共通要因として「1.紛争の罠」「2.天然資源の罠」「3.悪い統治の罠」「4.悪い隣国の罠」という4つの項目が指摘されている一方、Dani Rodrikの「One Economics, Many Recipes」では、途上国で経済成長がうまくいかない要因として「高すぎる資金調達コスト」や「低すぎる事業収益」などを掘り下げ、国ごとに特有のボトルネックを見つけ出すという成長診断(Growth Diagnostics)アプローチを提唱している。私はどちらの主張にも一定の理があると思うけれども、実際の線引きはどうなっているかというところに興味があった。
もちろんこれは、一朝一夕に答えの出る問いではない。さまざまな立場から、さまざまな意見が寄せられた。その中で個人的におもしろく思ったのは、「南アジアや北アフリカといった単位でいえば、地域特性は明確にある。あるいは、狩猟文化 or 農耕文化というカテゴリの分け方もある」と、「Aの政策とBの政策を組み合わせたらうまくいきやすい、といった経験知のようなものが開発機関には蓄積されている」という2つのコメント。

ヒマラヤの小さな村で1年暮らしたOさんからの、開発学の根幹に迫る質問。「経済成長は本当に善なのか?」 ⇒ 「問題意識はわかるけど、『物はなくても心は豊か』なんてセリフは、明日の飯にも困っている人たちの胸に本当に響くのか?」とか、「100年先を見据えた大局的な開発計画が必要なのではないか?」 ⇒ 「それが行き過ぎると計画経済になっちゃうんじゃないか?」とか、開発学を志した人なら誰しも一度は突き当たるであろう問題を、改めて議論した。


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