2013/06/30

ホノルルに着いて1週間が経ったこと

 ホノルルに到着して1週間。いま私は、自由の空気を吸い、祝福の雨を受け、平穏の土を踏み、まだ死んでいないのに天国に来てしまったような気分に浸っているところだ。

・・・と、ここまで読んで、「なんだ、こりゃ。このブログは『バークレーと私』ではないのか。なぜ突然ホノルルの話になるのか」と困惑される向きもあるだろう。実は、今回から新ブログの




がはじまるのだ。『バークレーと私』は、前回のジョギングの記事で最終回となる。読者の皆さん、これまでご愛読ありがとうございました。

(バークレーと私 おわり)















・・・というのは真っ赤な嘘だが(すみません)、ホノルルに来ているというのは本当だ。
 実はいま、ハワイ自然エネルギー研究所(Hawaii Natural Energy Institute)でインターンをしているのである。

 GSPPでは、夏休みの間にインターンをするのが卒業要件となっている(フルタイムで10週間以上)。これは混じり気のない100%の義務で、前職の如何にかかわらず、自力で「就職活動」をして勤務先を見つけなければならない。どこにも見つからなかったら?そんなことを考えてはいけない。古今東西、ここまで厳格な条件を定めている公共政策大学院は、おそらくGSPPだけだろう。




 インターン探しのプロセスは、主に冬休みから春学期にかけて進む。その間、就職説明会やネットワーキングなどのイベントが毎週のように開かれることになる。連邦政府の人事担当者もバークレーくんだりまで来てくれる。ワシントンDCにもOB/OGを多く輩出するGSPPの面目躍如といったところだ。

 事務方のサポートもきわめて手厚い。履歴書の書き方、面接の受け方から、人脈の作り方、握手の仕方(!)まで、すべて個別相談ベースで対応してくれる。ここまで行き届いた就職課って、日本の大学にはあるだろうか。いや、ないだろう。キャンパスの3km圏内に近づいただけで精神が不安定になるようなダメ学生だった私に、それを語る資格はないけれど。




 ハワイ自然エネルギー研究所でインターンをするまでの経緯を、以下に簡単に記しておこう。

 インターン先選定にあたり、私の判断基準は、
 1.エネルギー・環境政策に関係していること
 2.アジア・大洋州地域に関係していること
 3.今後の人生で経験できそうにないこと
の3つとした。

 第一志望は、ブータン王国政府であった。その1。ブータンは、電力需要のほぼ全量を水力発電で賄っていると同時に、余った電力をインドに輸出して外資を稼いでいるという、きわめてユニークな立ち位置にある。その2。もちろんブータンは南アジアの国家。その3。今後の仕事でブータンに出張する可能性はかなり低い。いわんやインターンをや。
 しかし、妻が妊娠していたこともあって、最終的にブータン行きは断念した。まあ生後3週間の息子と妻を置いてハワイに旅立つというのも相当なものだが(ホントすみません)。

 次に私は、とある反政府系団体(ちょっと固有名詞は書けない)にアプライしようと考えた。「その3」の判断基準を重視したわけだ。しかし、調べて見ると予想以上にヤバイ感じで、面白半分で入団してみたら面白くない事件が次々に・・・みたいな状況が容易に予想され、こちらも断念するに至った。

 最初に履歴書を送ったのは、バークレーAPECセンター(Berkeley APEC Study Center)であった。しかし、待てど暮らせど返事はない。それもそのはず、そもそもここではインターンを募集していなかったのだ。

 そこで私は、アジア・ソサエティ(Asia Society)のサンフランシスコ事務所に応募した。運良く一次審査をパスし、最終面接にまで進んだのだが、結果は不採用であった。敗因はたぶん、私の英語が下手だったこと(アジア系の団体と思ってたら面接官は3名の白人だった)、それからエネルギー・環境政策に強みのある人材が特に求められていなかったということだろう。残念だが、まあ仕方がない。

 私はまた、イースト・ウェスト・センター(East West Center)のホノルル事務所にも応募した。その返答こそ「今年はインターンを募集していないのよ、ごめんね。With warmest aloha!」というものだったが、別の組織を紹介してくれたり、1泊20ドルという破格の大学寮(いま私がこの原稿を書いている場所だ)を斡旋してくれたりと、こちらが心配になるほど親切に対応していただいた。そのこともあって、私の気持ちは、この比類なき楽園へと急速に傾きつつあった。

 ハワイ自然エネルギー研究所(以下HNEI)の存在を知ったのは、ちょうどその前後であった。HNEIは、名称のとおり、風力、太陽光、水素、バイオマス、スマートグリッド、メタンハイドレートといった具合に、向こう数十年でますます存在感の高まりそうなエネルギー分野を扱う研究機関で、まさに私の関心のど真ん中、どストライクであった。
 研究員は理工学系の出身がほとんどで、公共政策学専攻の学生などは明らかに対象外のようだったが、例によってダメモトでHNEIの窓口に履歴書を送ってみたところ、これが思いのほか好感触。約30分の電話面接だけで採用が決まってしまった。ありがたいことである。Mahaloである。




 私がハワイで働くと言うと、一部の知人からは(特にかつての職場の上司・同僚からは)、「おかしいだろう」「遊びまくるんだろう」といった反応が見られた。下手をすると石を投げられそうな気配がある。しかし、この場を借りて弁解しておきたいのだが、これはまったくの事実誤認である。私は研究活動に専念するためにハワイに滞在しているのであって、決して遊び呆けるためではない。そこのところ、誤解のなきようお願い申し上げたい。

 そう、一見してスキューバ・ダイビングをしているようでも、実は潮力発電の実証可能性について真摯に検討しているのである。一見してウインド・サーフィンをしているようでも、実は洋上風力発電の実証可能性について真摯に検討しているのである。一見して溶岩ハイキングをしているようでも、実は地熱発電の実証可能性について真摯に検討しているのである。一見してアロハ・ビールをぐい飲みしているようでも、実は体内アルコール発電の実証可能性について真摯に検討しているのである。

 ぎゃん。痛い。やめて。石をぶつけるのはやめて。あひゃん。
 

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