2012/09/25

少人数だけど多様性に満ちたGSPPに感銘を受けたこと

 バークレーに到着して約1カ月半。いま私は、大学寮の勉強部屋で経済学と統計学のレポートと格闘しながら、明日の政治学の授業までに丸一冊を読み終える必要のある(しかしまだ1ページも読めていない)Thomas E. Mann著「It's Even Worse Than It Looks」と、その他にも100ページ近いリーディング課題を抱え、さらに今週末には経済学の中間試験を控えている。
 と、こう書くといかにも大変なようだが、実際これは大変である。ネイティブですらこなしきれない量の課題に押し潰されそうな苦しみと、いっそのことぺしゃんこになってしまえば楽になるんじゃないかという破滅への誘惑とが勢いよく絡み合って、ひとつの巨大な渦を形成し、その濁流に逆らおうとしながら力及ばず、息つぎするだけで精いっぱいの日々である。もちろん自分で選んだ道なので文句を言う筋合いはまるでないし、勉強自体はかなり楽しいのだけれど。

 今回は、UCバークレー公共政策大学院(Goldman School of Public Policy。以下GSPP)で約1カ月半を過ごした学生の視点から、クラスメートについていくつか書いてみようと思う。


<生徒の構成>
・今年入学した生徒は82名。概ね例年どおりの数字という。うち男性は33名、女性は49名。

・平均年齢は27歳。20代が大層を占めるが、30代(私は先日このカテゴリに入った)も40代も50代もいて、教室内でもしっかりプレゼンスを示している。

・留学生は14名。中国、日本、韓国、タイ、インド、パキスタン、カナダ、ブラジル、チリ、メキシコという顔ぶれだ。とはいえ、英語が不得手な留学生は、日本人(私のことだ)と韓国人くらいである。その他の方々は、発音に少し(かなり?)癖があっても、ネイティブと十分わたりあえる英語力を持っているようにお見受けする。私としては、正直、とても、寂しい。

・留学生以外の68名はすべてアメリカ人ということになる。でもご案内のとおり、アメリカ人というカテゴリ自体がとても広い。白人と黒人が一緒にいることを俗に「コーヒー&ミルク」などと言ったりするけれども、ここではコーヒーとミルクに加えて、シナモン、チョコレート、はちみつ、ざらめ、さとうきび、コニャック、ほうじ茶あたりが入ってきている。まあそんな飲み物は世の中にはないけれど。

(2013年4月27日追記: GSPPのパンフレットによれば、2012年度の志願者数は741名、合格者の平均勤務年数は4.0年、GPAの平均は3.67、GREの平均点はそれぞれVerbal:620(新テストでは161)、Quantitative:720(新テストでは158)、Analytical Writing:4.5、そして留学生のTOEFL iBTの平均点は103点とのこと)


<生徒の背景>
・undergraduateの出身校は、UCバークレー、ハーバード大学、スタンフォード大学といった名門校も目立つけど、ご安心あれ(?)、そうではない大学(例:私の出身大学)の方が数としてはよほど多い。単純に学歴という物差しだけで選考をしていないことが伺える。

・大学の専攻もまた多彩である。経済学、政治学、法律学、社会学、国際関係学、公衆衛生学、数学、物理学(私のほかにもう一人いた)、化学、生物学、海洋学、天文学、文学、哲学、人類学、心理学、中南米学、芸術史、リストはまだまだ続く。よくぞここまで揃ったなあ、という奇妙な感動すらある。

・公共政策学というからには役人がマジョリティを占めるのかと思いきや、全然そんなことはなかった。教師、軍人、警官、研究者、新聞記者、議員秘書、弁護士、銀行員から、NPO、NGO、エコノミスト、コンサルタント、シンクタンク、セラピストまで、これまた多彩である。日本の大学で、これだけ多岐にわたる職業経験を持った生徒を集める学部ってあるだろうか。あるいは私が知らないだけかもしれないが、ちょっと想像がつかない。


いちばん大きい教室でも、せいぜい80名程度のキャパシティだ(出所:GSPP) 

<生徒の特長>
・パンフレットの類でもよく言及されるのが、少人数ゆえの緊密なコミュニティである。競争よりも協創、というと何だか中学校の教室とかに貼られたきり風化した校訓のようだけど、私の偽らざる印象としては、確かにそのとおりであった。この雰囲気に惹かれて、HKS(ハーバード・ケネディスクール)を蹴ってGSPPに来たという同級生もいる。

・よく遊び、よく学ぶ。これまた中学校の教室的なフレーズだけど、飲み会、バーベキュー、ライブ観賞、ハイキング、カリフォルニアツアー、ワインツアー、共和党演説のテレビ観賞パーティー(公共政策専攻だけあって政治好きがとても多い)と、ありとあらゆる生徒発案のイベントが企画される。

・自主的な勉強会もしばしば開催される。例えば今年のGSPPのオリエンテーションでは、Medicaid(アメリカの公的医療保険制度。その適用範囲の拡大の是非が、今回の大統領選の争点のひとつになっている)をめぐる全員参加型のディベートがあったのだが、この前日(日曜日)、前職が自治体でのMedicaid関連業務だったという生徒が自主的に講演をしてくれた。この奉仕の精神、大いに感じ入るところがあった。まあ私は前述のハイキングに行っていたので遅刻しちゃったんだけど。


 他にも書きたいことはあるけれど、そろそろまた濁流に飛び込まなくてはならないので、今回はここで筆を置く(キーボードから手を離す)。それでは、また。


学校の裏山からの風景

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