2012/04/22

生まれて初めてバークレーを歩いたこと

先日、GSPP(Goldman School of Public School)から入学オリエンテーションの開催案内があった。UCバークレーに入学すると決心した私は、半ば強引に有給休暇を取得し、カリフォルニア州バークレーを訪問した。今回はそのことについて記してみたい。

前にも書いたが、私はこれまでアメリカに行ったことがない。アメリカという国名を耳にして私の頭にまず浮かぶのが和製ミュージカル映画「君も出世ができる」で雪村いづみが歌う名曲「アメリカでは」というレベルである(♪ア~メ~リ~カ・へ・ゆ・け・ば、顔を洗うにもコカコーラ!)。

そんな免疫のなさであるから、サンフランシスコ国際空港に降り立った瞬間から私の警戒心は高まりを見せていたが、意外にも人々の物腰は柔らかく、全体的にとても親切な印象を受けた。どんな按配に親切だったかというと、例えば以下のとおりである。

・ユナイテッド航空の機内に置き忘れてしまった私の眼鏡を、サービスセンターの黒人が熱心に探してくれた。眼鏡は見つからなかったのだが、黒人は「かわいそうなボーイ、残念だったね。今日はどこに泊まるんだい。えっ、バークレー?それはよかったじゃないか。ボーイ、バークレーに行けば眼鏡屋さんもきっとある筈さ。」と大いに同情してくれた。
(数時間後、ほかならぬ私のリュックサックから眼鏡がするっと出てきた。私は人生で何千回目かの自己嫌悪に陥った)

・ドライバーの歩行者に対する態度が全体に紳士的であった。これは客観的に言って車の方に分があるんじゃないか、という場面でも、先に横断するよう私に手振りで示してくれることが多かった。これはマナー云々というよりも、単純に歩行者優先のルール(違反すると罰則を伴うルール)がカリフォルニア州内で徹底されているからかもしれないが。

・持参していたCanonのデジカメ「IXY 600F」のバッテリーが切れてしまったので(充電器を持ってくればよかった)、たまたま見つけた家電量販店に入ったところ、IXYシリーズにも使えると謳われているバッテリーが20ドルで売っていた。一見すると使えそうだが、もし駄目だったらどうしようと考えあぐねていたところ、若き日のポール・ニューマンに似たナイスガイがやってきて「お困りなら実際に試してみましょうや」みたいなことを言って、そのパッケージをハサミでちょきんと切って商品を取り出してくれた。結果的には「IXY 600F」には適用できなかったのだが、その場で返金してくれたので、お金は一銭もかからなかった。

ベイエリアを中心に走る 、BART(バート)と呼ばれる地下鉄。これに乗ればサンフランシスコ国際空港からバークレーまで約40分で行くことができる。とても便利だ。


土曜日の午後に到着したところ、ちょうどファーマーズ・マーケットが開催されていた。環境意識の高い市民が多く住むバークレーでは、こういった催しが定期的に行われているという。


スペインの植民地であったためか、コロニアル風の建物が多い。写真はベトナム料理店の「サイゴン・エキスプレス」。ベトナム料理店というより、ちょっとした高級百貨店のような風貌だけど。



スターバックスの創業者も働いていたという、「ピーツ・コーヒー&ティー」。バークレーが発祥地とのことで、あちこちで見かけた。


迷い猫探しの張り紙。手でちぎられた連絡先が、住民の優しさを物語る。ルーファスくん、無事に見つかったのだろうか。


バークレーの印象を日本の町に例えるなら、どうだろう、(東京ローカルで申し訳ないが)文京区の本郷や根津といったあたりだろうか。そこにときどき台東区の上野が入りこんでくる。そんなイメージだ。あくまで私の主観に過ぎないが、双方には、

・敷地の広い大学があって、それがその地域のシンボルになっている。
・学生向けの店が多い。高級レストランは少ない代わりに、安くて美味しい店ならたくさんある。
・都会に近いが、都会ではない。むしろ雰囲気は下町のそれで、地域住民主催のイベントも頻繁に開かれる。

といった共通点があるように思えた。

こんなところは刺激が少なくて退屈だと感じる向きもあるかもしれない(確かにサンフランシスコと比べると刺激は目盛り5つ分くらい少ない)。しかし、図書館で勉強して、古本屋をぶらついて、喫茶店に入って、ちょっとジョギングして、たまにコンサートを聴きに行って、といった暮らしを理想とする私にとっては、文句を言う隙のない環境である。

街にはホームレス風の人もいる。その目つきや振る舞いは、日本の同業者とあまり変わらない。でも中にはスターバックスのカップを持って悠々と歩いている、貧しいんだか裕福なんだかよくわからない人もいる。そんなお金があったらもっと栄養になるものを買えよな、と思うけど、まあそれは余計なお世話というものだ。バークレーに住むホームレスとして「武士は食わねど高楊枝」的な矜持を保っているのかもしれないし、スターバックスが慈善事業としてカフェモカのグランデをホームレスたちに無料で配っているのかもしれない。あるいは、最も投げ銭の集まる入れ物がスターバックスのカップであることを経験的に知っていて、それである種の「設備投資」として購入しているのかもしれない。

ここまで長々と書いてきて、肝心のUCバークレーのことにまったく触れていないことに気がついた。期待された読者の方には誠に恐縮だが、次の機会とさせていただきたい。

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